筋トレをやっていて一番気になる疑問の一つってなんでしょうか?それは、どんどん筋肉つけるとして、いったいその筋肉の成長スピードはどれほどのものかということかもしれませんね。
人によっては、一生懸命筋トレに励めば、1年後は筋肉だけで10kgも20kgも増やせると考えているかもしれませんが、例えば1ヶ月に5kg筋肉だけで増量させることは可能なのでしょうか?
実は、同じようなエクササイズプランと栄養プランに従った人たちでも、その筋肉が成長するスピードには大きな違いがあるのです。筋肉の成長スピードが人によってばらつきがあるというのは、考えれば理解しやすいですが、意外に筋トレ雑誌やサイトでもあまり語られることがありません。
そこで今回は、筋肉の成長スピードへ影響する要因を5つ紹介して、具体的な筋肉量の成長スピードを筋トレ・フィットネス業界でも有名な研究者の見解を交えて考えていきます。
- 筋肉の成長スピード要素1:トレーニングエイジ(筋トレの経験値)
- 筋肉の成長スピード要素2:ホルモンプロフィール
- 筋肉の成長スピード要素3:遺伝子
- 筋肉の成長スピード要素4:マッスルメモリー
- 筋肉の成長スピード要素5:サプリメントの摂取
- 筋肉の成長スピード比較
- 石井直方教授による筋肉の成長スピード
- 筋肉・筋トレについてついでに確認しておきたい記事
筋肉の成長スピード要素1:トレーニングエイジ(筋トレの経験値)
トレーニングエイジとは、筋トレでいうと、リフティングを続けている期間や、一つの筋トレ種目をどれほどの期間経験しているかのことです。
初心者ならベテランに比べ、筋肉は早くつきます。あまり運動していない人が、いきなり筋トレを開始すると、最初はびっくりするぐらいのスピードで筋肉が成長していきます。
筋肉の成長スピード要素2:ホルモンプロフィール
テストステロンなど、筋肉づくりに関わるホルモンの分泌量には、個人間でばらつきがあります。
- 行っている筋トレのトレーニング内容が、テストステロン反応の誘発にふさわしくない場合(例:下半身のトレーニングをしっかりと行っていない、ウェイトの負荷が十分でないなど)
- テストステロンを十分に分泌しない体質である
といった理由が挙げられます。テストステロンは筋肉の成長を促すのに大切なホルモンなので、分泌量によって個人間でも筋肉の成長スピードが大きく変わってきます(例:女性と男性の違いが分かりやすいでしょう)。
筋肉の成長スピード要素3:遺伝子
遺伝的ベルカーブ(釣鐘曲線)という考え方があります。簡単に言うと、ホルモンバランスや骨格の厚みのおかげで筋肉が自然にたくさん増える人もいれば、どんなにハードな筋トレをしてもなかなか筋肉がつかない人(ハードゲイナーなど)もいます。
例として、同じ骨格であっても日本人と欧米人を比較すると、欧米人の方が骨格が大きく、その分体を動かすために最低限必要な筋肉量が日本人より必要となります。
ちなみに、全体の68%の大半の人は、遺伝的にはその中間(つまり平均的)といわれています。
筋肉の成長スピード要素4:マッスルメモリー
体重82kgの人がマラソンのトレーニングをして9kgの筋肉が落ちたとすると、それを取り戻すのにどのくらいかかるでしょうか?
そんなに長くはかかりません。せいぜい、1~2カ月です。というのは、体には元のホメオスタシス(恒常性※つまり体が慣れた状態)に戻すメカニズムが備わっています。これが「マッスルメモリー」と呼ばれるものです。
筋トレを継続して、ある程度の期間一定の筋肉量を維持していれば、筋肉が落ちたとしても以前の状態へ戻すのは楽になるのです。
筋肉の成長スピード要素5:サプリメントの摂取
ステロイドなどパフォーマンス増強物質のような、副作用が心配される強力なサプリメントは筋肉づくりのスピードを上げますが、あまりお勧めしません。同様に筋肉の成長をサポートするクレアチンは、リスクは比較的少ないようですが、それでも副作用の心配は残ります。
しかし、筋肉の成長をサポートする筋トレのサプリメントを上手に利用すれば、筋肉の成長スピードは見違えるほど変わります。筋肉がつきにくいハードゲイナーであっても、サプリメント次第では大きな体を作ることが可能です。
詳しくは、絶対に効く筋肉やトレーニングのサプリメント!筋トレ倍増効果あり!にまとまっているので確認してみましょう。
筋肉の成長スピード比較
マクドナルド氏の研究による筋肉の成長スピード
栄養学の見地からボディビルダーを支える、米国のフィットネスライターのライル・マクドナルド氏は、筋肉を増やすペースについて次のような数字をはじき出しています。
この数字は、あくまでも現実的に可能な筋肉の増加量です。栄養管理を100%徹底的に行って、100%効率的な筋トレをすれば、もっと多くの筋肉成長を見込めることもできますが、あくまでも大多数の人が達成可能な数値になっています。
筋トレ年数 | 筋肉増量 / 月 | 筋肉増量 / 年 |
---|---|---|
1年目 | 0.91kg | 9~11.3kg |
2年目 | 0.46kg | 4.5~5.5kg |
3年目 | 0.23kg | 2.3~2.7kg |
4年目以降 | 0.9~1.3kg |
月約900g増ということは、週に約0.23g増える計算になり、それほど早いとはいえません。しかし、1年、コンスタントに増えれば約11kg増えることになります。前述の5つの要因が、筋肉成長のスピードに影響を及ぼすので、より大きな効果を獲得することも可能です。
マクドナルドモデルは男性向けですが、女性にはこのざっと半分の数字があてはまるようです(例えば、1年目は約4.5~5.5kg)。
[参照:McDonald, L 2015, http://bodyrecomposition.com/]アラゴン氏の研究による筋肉の成長スピード
アラン・アラゴン氏は米国の運動生理学者で、最新のエクササイズや栄養研究の第一人者です。リサーチレビューの中でも、一般的なリフターの体重に対する割合で、筋肉成長のスピード課題に取り組んでいます。
アラゴン氏も筋トレを行って大多数の人間が、達成可能な現実的な筋肉成長スピードを以下の通り算出しています。
筋トレレベル | 筋肉量の増え幅 / 月 |
---|---|
初心者 | 体重の1~1.5% |
中級者 | 体重の0.5~1% |
上級者 | 体重の0.25~0.5% |
例えば、リフティングの経験が無い、体重59kgの若者が、きちんとした筋トレプログラムと栄養管理を続けると、月に約0.59~0.89kgのペースで筋肉が増えることになります。1年では、約6.8~10kgの筋肉が増える計算です。この若者は1年後に、体重が約70kgとなり、月に0.35~0.7kgのペースで筋肉を成長させていきます。
さらに1年続けると、体重約77kgの筋トレ上級者が出来上がります。以後は、0.225〜0.46kgのペースになり、筋肉成長の伸び止まりに近づくほど、ペースは落ちていきます。
[参照:Aragon, A 2015, http://alanaragon.com/]石井直方教授による筋肉の成長スピード
日本の筋肉・筋トレ業界の権威であり、第一人者といえば東大の石井直方教授でしょう。元ボディビルダーという経歴を持ち、且つ筋肉・筋トレの研究者として絶大な信頼をしている石井教授によると、理論値としては年間48kgの筋肉成長が上限値となるそうです。
しかし、もちろん48kgというのは理論値で、あくまでも摂取したタンパク質が全て筋肉になり、且つ、100%効率の良い筋トレを取り入れて、徹底的な栄養管理を行った場合です。
石井教授の個人的な経験としては、多い時で年間15kgぐらいの筋肉量がついたことがあるかもしれないということです。※もちろんこれは、徹底した筋トレプログラムと栄養管理に基づいた結果なので、一般的にはもう少し少なくなるはずです。
石井教授の筋肉本!
筋肉・筋トレについてついでに確認しておきたい記事
- 筋肉発達をコントロール!カロリーと筋トレをボディビルから学ぼう!
- 筋肉量の平均はこれ!筋肉量の標準を測定して必要な筋トレを考えよう!
- 寝る前に筋トレすると筋肉つけるのに効果的?メリットとデメリット
- 筋トレにアルコールは影響あり!お酒と筋肉の付き合い方
- 筋肉を作る食べ物や食材10選!筋トレと一緒に摂りましょう
いかがでしたか?
賢い筋トレと栄養管理を続けていけば、長期的に効果も蓄積していきます。その結果、ある日気がついたら筋肉量が増えていることになります!
念を押しますが、筋肉づくりには忍耐が必要です。筋肉を増やすことは、ダイエットで脂肪を落とすより難しいかもしれません。筋肉づくりは、休むことなくコツコツ積み上げていくキツイ作業であり、脂肪を落とすことは、普通の人がライフスタイルをちょっと変えることでも可能なことなのです。
それでも絶対に頑張った努力が報いられるのが、筋トレの素晴らしさです!